布川の熊野神社
村石の入口、老松が聳える山の麓に伊弉諾命、伊弉再命、久久能智命の三柱を祀る布川の鎮守熊野神社があります。
神社の縁起として「熊野大権現麓山大権現両社宮慶長二年(1597年)羽州上杉様給人小梁川民部申仁勧請仕申候」という文書が伝わっています。その後、宝暦の大火で類焼し古記録の大半を失いました。
石の鳥居をくぐり、きざはしを登ると正面に拝殿があり、その奥に本殿があります。拝殿は大正十二年に再建されたもので、以前の建物は左手に遷されて古拝殿となっています。拝殿の右手には神馬庫、神輿庫を経て一メートルを越す大きな石塔が三基建てられていますが、昭和十七年に月舘町煙草耕作組合によって建立された「煙草大神」の碑は珍しいものです。
石塔を過ぎると農作の守護神「麓山(はやま)様」の社殿があります。大戦前までは、麓山籠りをはじめ「火渡り」の行や、口占(くちうら)など農作に関した神事が行なわれておりました。戦後はこのような神事は消滅してしまいましたが、拝殿前で行なわれた「火渡り」を記憶している人もいるのではないでしょうか。
麓山様の隣は、延命地蔵・愛宕様、金比羅様を合祀する社です。
拝殿の裏手から裏参道には石塔が多く建てられ、今でも参拝する信者の姿を見ることができます。
熊野神社には「三匹獅子舞」が伝わり、氏子の若者たちによって受け継がれてきました。伊勢参りのときおみやげとして獅子頭と舞を持ち帰ったといわれていますが、弓を中心として三匹の獅子が踊るたいへん活動的な舞です。一時は廃絶の危険にありましたが、若者たちによって継承され、大字団結の一事業として4月の祭礼の時に奉納されています。また、壮年の奉納する「太々御神楽」も欠かせないものでしたが、今では行なわれなくなりました。